新Pixelは久々にドコモも販売、3キャリア揃い価格競争が激化の予感(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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グーグルは、10日(現地時間)に「Google I/O」を開催。ハードウェアとして、同社初のフォルダブルスマートフォン「Pixel Fold」や、高コスパで評判の高い「Pixel 7a」、スマートスピーカー的な機能を取り入れた「Pixel Tablet」を発表しました。日本では、Pixel FoldとPixel 7aをドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が販売。Pixel TabletはWi-Fi版のため、KDDIとソフトバンクがアクセサリー的な形の物販として取り扱います。

▲グーグルは、Google I/OでPixelシリーズの最新モデルを発表した。こちらはPixel 7a、本記事冒頭の写真はPixel Fold

日本特有のトピックとしては、Pixelをドコモが久々に販売することが挙げられます。ドコモは、Pixelが日本に初上陸した際に「Pixel 3/3 XL」を導入、その後も廉価モデルの「Pixel 3a」を取り扱っています。元をたどれば、リブランディング前のNexusシリーズの中にも、「GALAXY NEXUS」のようにドコモが独占販売していた端末があります。

▲ドコモにとって、Pixelシリーズの取り扱いはかなり久々

比較的早い段階からグーグルのスマートフォンを導入していたドコモですが、販売面ではあまり結果が思わしくなかったようです。Androidでありながら、いわゆる“ドコモ仕様”にできず、取り扱いが難しかったこともあり、販売は徐々にフェードアウトしていきます。Nexusシリーズも途中でソフトバンクにかっさらわれていきましたが、Pixelも同様に、4~7までは導入が見送られていました。

▲写真は2018年10月にドコモの発表会で撮影したPixel 3。翌年のPixel 3aを最後に、発売が途絶えていた

そんなドコモのトラウマをよそに、グーグルはPixelシリーズに磨きをかけ、徐々に日本での存在感を高めています。特に、廉価モデルのaシリーズは、高いコストパフォーマンスが評価され、販売ランキングでも上位に位置するスマートフォンになりました。KDDIやソフトバンクが激しく販売合戦をしていることも、Pixelシリーズが浮上するきっかけになりました。

このような中、ドコモのPixel再登板を期待する声は高まっていました。かつてのiPhoneと同様、人気のあるスマートフォンをドコモだけが販売していないのは、契約者を獲得、または維持するうえでマイナスになりかねません。Pixelはグーグル自身も販売しているため、必ずしもドコモ回線で使えないわけではありませんが、このような使い方はまだまだメジャーとは言えません。回線とセット販売できない点は、ドコモにとってマイナスにもなります。

▲AIを軸にしたユーザー体験やコスパの高さから徐々に人気を獲得していったPixel。写真は今年1月の家電量販店で、KDDIとソフトバンクが火花を散らしている様子。ドコモは蚊帳の外だった

また、日本特有の周波数事情が、話を複雑にします。「Pixel 4a(5G)」から5Gに対応したPixelですが、直近の「Pixel 7/7 Pro」に至るまで、ドコモの持つn79(4.5GHz帯)には未対応。n79は衛星との干渉をあまり受けず、出力を上げやすいため、ドコモはこの周波数帯で積極的に5Gのエリアを拡大しています。Pixelが対応するn78(3.7GHz帯)も利用はできるものの、こちらはエリアがかなり限定されます。

一方で、n79は日本以外だと主に中国が採用しているものの、グローバルに利用されている周波数帯ではありません。中国展開ができないグーグルにとって、実質的に、ドコモのためだけにn79に追加で対応し、認証を取得しなければならないというわけです。ドコモに納入できないのであれば、グーグルがn79に積極対応する理由は薄くなってしまいます。

▲ドコモの5Gエリア。都内ではそれなりに広がっているように見えるが、これは高出力で電波を吹けるn79のお陰だ。これまでのPixelはこのごく一部しか利用できなかった

かつてはドコモも、Pixelを採用していない理由の1つとして、n79に対応していないことを挙げていました。販売不振だったトラウマと、ドコモの周波数に完全対応できていない端末側の事情の両方があり、これまでのPixelは導入がスルーされてきたというわけです。

ただ、先に述べたように、Pixelも実績を重ねて、売れ筋の一翼を担うようになりました。また、対応周波数の話は鶏が先か卵が先かの問題。ドコモが採用し、販売量が増えるのであればグーグルも対応しますし、グーグルがn79に対応させればドコモもPixelをラインナップに加えやすくなります。こうした交渉がようやく実って導入されたのが、Pixel 7aであり、Pixel Foldであるというわけです。

▲Pixel 7aは、上位モデルを差し置いて初めてn79に対応したPixelになった

満を持して再登板したドコモのPixel 7aですが、3キャリア+グーグルがそろい踏みになったことで、価格競争が激化する可能性があります。実際、筆者も、大手家電量販店で発売日の5月11日からさっそく店頭独自割引がつき、一括価格でグーグル直販の6万2700円より安くなっている価格表を目撃しました。MNPでの割引に端末の返却を伴うアップグレードプログラムを組み合わせれば、実質での支払額が毎月1円になるケースもあります。

ミッドレンジな価格帯のPixel 7aですが、チップセットが上位モデルと同じ「Tensor G2」で、カメラ写りも大きくは変わらないなど、性能だけで言えばハイエンドに近い位置づけの端末です。そんなPixel 7aが、発売初日から実質で月額1円などの価格で販売されているのは、なかなか衝撃的。今年は廉価モデルとして人気の高いiPhone SEの新モデルがないこともあり、各社とも振るってPixel 7aをプッシュしそうな予感がします。

▲左がPixel 7a、右がPixel 7。Pixel 7aは細かな部分でコストカットしているところも多い一方で、処理能力やぱっと見のデザインは上位モデルにそろえている

以前は上位モデルであるはずのPixel 7ですら、MNPで実質1円になっていたケースがあり、Pixel 7aにあまり魅力を感じない人もいるでしょう。タダより安いものはないのがスマートフォンの世界ですが、上位モデルが1円となると、廉価モデルの最大にしてほぼ唯一の利点であるコスパのよさが失われてしまいます。一方で、元々の価格が高いモデルを安く販売するには割引を積み増さねばならず、キャリアや販売店にとっても痛手が大きくなります。そのため、主力モデルは徐々にPixel 7aにシフトしていく可能性もありそうです。


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《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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