AI一色だった5月のGoogle I/Oで発表された新サービスの中でも、一般ユーザーが手軽に使えそうだと期待したのが「Search Generative Experience」(以下「SGE」)でした。まずは米国でのみの提供でしたが、これが8月30日に日本とインドでも使えるようになりました。米国以外で使えるようになったのは、今のところこの2カ国のみだそうです。
SGEは、Microsoftの「新しいBing」のような、Web検索を生成AIチャットボットとのやりとりで行うというサービスです。全収入に占める広告収入の割合がごくわずかなMicrosoftと違い、GoogleにとってのGoogle検索(の広告)は重要な収入源。だから、Google検索では広告主のデメリットになるようなことは、できません。とはいえ、MicrosoftやOpenAIの破竹の勢いに引きずられるように、これまで慎重だった生成AIの一般提供を急がざるを得ない。そんな経緯でのSGEです。
正式サービス前の実験場という位置付けのGoogle Labs内でのスタートであり、日本語名称は「生成AIによる検索体験」となっているように、まだまだ実験段階のものです。実際に使ってみても、「ん?」なところが多々あります。でもまだ実験中なわけですし、実験中だからこその「ん?」なので、改善してもらうためにせっせとフィードバックしています。
▲せっせとフィードバック
私の場合、手持ちのGoogleアカウントのうち、5月のSGE発表後にウェイティングリストに登録したアカウントだけ使えるようになっていました。今見たらウェイティングリストへのリンクが消えて、新規の登録はできなくなっていました。
いきなりアクセスが増えるとパンクするので、しばらくはこれまで登録した人にロールアウト、という感じなのかも。9月4日に確認したら、ウェイティングリスト登録していなかった自分アカウントでも利用可能になっていましたので、まだの人もいずれ使えるようになると思います。
今回のGoogle Talesは、このSGEをちょっと使ってみた感想です。
新しいBingの初期の頃と同じように、SGEも使っている間にどんどん変化しているので、後で同じことをやってみても、ここに書いたとおりにはならないかもしれません。以下は、経過報告だと思って読んでくださいませ。
GoogleアカウントでログインしたGoogle検索のページの右上に三角フラスコのアイコンが表示されたら、SGEが使える可能性があります。
▲右上に三角フラスコが表示されたら使える可能性が(できない場合もあります)
これをクリック(モバイルアプリならタップ)して開くページでSGEを有効にします。
▲有効にする
それから検索枠にクエリを入力すると、「生成中...」の後、オーガニックな検索結果の上にSGEの回答コーナーが表示されます。
必ずSGEが答えてくれるわけではないようで、例えば単語だけ(Pixel、とか)だとSGEは働いてくれませんでした。なるべく文章にした方がいいみたいです。下の画像は「Pixelのスマホを買おうと思うのだが。」というクエリに対するSGEのお返事。色付きの部分がSGEコーナーです。
▲SGE日本語版の画面例
Bingと同様に、まずは「試験運用中のため、品質にむらがある可能性があります。」という注意書きが。右上に並ぶサムネイルは、SGEが説明を作る際に参考にしたWebサイト一覧です。3つしか表示されていませんが、カルーセル状になっていて結構たくさん参照していることが分かります(右上のボタンですべて一度に表示できます)。参照サイトをクリックして開くと、参照した部分にマーカーが引かれています。
▲参照元サイトのどこを参考にしたかを明示
SGEコーナーの最下部に並んでいるのは、関連するさらなる質問の候補です。この中のどれかをクリックするか、さらにその下の「追加で聞く」に自分でクエリを書くと、SGEが最初の質問と関連する質問だと認識して答えてくれます。これはBingにもある機能ですね。
ちなみに、「自殺方法」とか「大麻を入手するには」などの答えちゃいけなそうなことを検索すると、SGEは答えずに黙ってこころの健康相談統一ダイヤルの番号とか厚生労働省のページとかをオーガニック検索として表示してくれました。
少し使ってみて、気になったことがいくつかあります。
気になる点はあれど改善も進む
例えばテクノエッジにものすごくいいことが書いてあって、それをSGEが拾って説明の一部に盛り込んだとして、右上にテクノエッジの記事のサムネイルがあってもそれをクリックするかなぁ。つまり、コンテンツオーナーとしては、ページビューが減るんじゃないかという心配はやっぱりあるなぁ、ということです。そこをうまく調整するための、実験なんだと思いますが。
ちなみにBingの場合は、説明文に数字が付いていて、数字にカーソルを合わせると参考にしたWebサイトが表示されます。個人的には、慣れているせいかもしれませんが、こっちの方がわかりやすいです。
▲Bingの場合
と、書いていたら、8月31日付のGoogleの公式ブログが公開され、関連情報の表示を改善しました、と。やっぱり同じような心配をする人からたくさんフィードバックがあったのでしょう。こういう改善のための実験ということですね。
▲新しい関連情報の表示方法
そして、「品質にむらがある可能性があります」ということわりがきの通り、解説の中身にも「ん?」というところがあります。たとえば、(Pixelの)「本体重量は207g」ってなに? とか。まだ、実験ですから本サービスではむらがなくなっていますように。
それより心配になったのは、広告表示です。Googleの説明によると、「SGEでは、検索広告はページ全体の専用の広告スロットに引き続き表示されます。この新しいエクスペリエンスでも、広告主は検索の過程で潜在顧客にリーチする機会が引き続き得られます」ということなんですが、クエリによっては広告がまったく表示されないこともあります。
例えば、前述の「Pixelのスマホを買おうと思うのだが。」では広告は表示されませんでしたが、「Pixelを買うには。」だと、SGEコーナーの上に“専用の広告スロット”が表示されます。
▲うまく広告が表示された例
どういう質問なら広告が表示されるのか、よくわかりません。というか、確実に広告が表示されないと、広告主は困惑しそうです。一般ユーザーはちょっと嬉しいかもしれませんが。
でも、この広告表示がきちんとできるようになったら、ユーザーとしても従来より広告とオーガニックな検索結果の区別がつきやすくなり、間違って広告をクリックしにくくなるので、いいかもしれません。
5月から実験している米国での調査では、「人々が肯定的なエクスペリエンスを享受」していることがわかったそうです。また、「若いユーザー(18 ~ 24 歳)の間で最も高い満足度スコアが得られており、会話形式でフォローアップの質問ができるのが楽しいという回答」だったそうです。
私の周辺でSGEを使えるようになった人のだいたいの感想は「いまいち」というものですが、これはまだ実験なので、フィードバックしつつ、進化を見守りたいと思います。