Logic Proが無料の大幅更新、ベース・キーボードもコード進行に合わせて自動演奏。あとはギター弾いて歌うだけ(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

アップルは5月7日、音楽制作ソフトLogic Proの大幅な機能アップを発表しました。Mac版はLogic Pro 11に、iPad版はLogic Pro 2となり、いずれも同等の機能を追加しています。

主要な新機能は、次の3つ。

・Session Players

・Stem Splitter

・ChromaGlow

このうち、Session Playersというのが注目です。

Session Playersは、従来のDrummerを拡張したもの。Drummerは、プレイヤーとしての特徴を持ったバーチャルドラマー数十人の中から楽曲のジャンルや特性に合ったキャラクターを選択し、さらにプレイスタイルを指定できる機能で、Logic Proやその無料版サブセットであるGarageBandの人気機能となっていました。

Session Playersでは、ドラムだけでなく、新たにベースとキーボードにも拡張しています。

iPhone、iPad用のGarageBandにはAutoplayという機能があり、ピアノ、キーボード、ベース、ギターは一定のパターンの自動伴奏が可能でしたが、コードはパートごとに自分で指定する必要がありました。SessionPlayersではコード進行に合わせて即興演奏が可能です。それを可能にしたのは、コードトラックの存在。

新バージョンではコード進行を記録するためのコードトラックも設けており、そこにコード進行を記録しておけば、Bass Player、Keyboard Playerはそのコードに従って演奏してくれるのです。Keyboard Playerでは、「シンプルなブロックコードから拡張ハーモニーによるコードボイシングまで」演奏すると説明しています。

▲Session Playersはコードトラックで指定したコード進行に従って演奏する

▲Bass Player

▲Keyboard Player

できたらギターも対応して欲しかったところですが、それはまあいずれ。ギターは自分で弾けるよ、という人であれば、ドラム、ベース、キーボードという残りのパートは全部Logic ProのセッションミュージシャンSessionPlayersにお任せできるのです。あとは歌えばいいだけ。

数年前、AppleのLogic Pro開発担当の人に、「GarageBandのAutoplayみたいな機能をLogic Proにもぜひ」とお願いしていたのですが、それを上回る形で実現してくれたことになります。

次のStem Splitterは、演奏楽器ごとに分かれた、いわゆるステムトラックを作るための音源分離機能。2MIXやモノラルのバンド演奏音源から、ボーカル、ドラム、ベース、その他の4つのトラックをAIで分離するものです。以前、Sunoを活用する方法として紹介したように、この種のソフトは無料から高機能な有料版まで様々なものがあります。


単純に機能比較で言うと、無料のUVR5と同等(性能は未検証ですが)。このためだけにLogic Proにする必要性は感じませんが、Appleシリコンに最適化されていることもあり、内蔵されているというのは便利なはずです。

将来、分離した音源をMIDI化する機能が搭載されたり、コードトラック用にコード進行を検出することができれば、この機能も有用になってくるでしょうから、期待は残しておきます。

3つ目の新機能であるChromaGlowはミックス用。Logic ProにはMastering Assistantというミックス用の機能があり、ダイナミクスや音の広がりを自動調整してくれますが、ChromeToneはそれをさらに音色にまで拡張したものとみて良さそうです。

「世界で最も称賛されているスタジオ用ハードウェアのブレンドによって生成されたサウンドをモデリングし、5種類の異なるサチュレーションスタイルを使い、あらゆるトラックに極めてリアルな温かみや存在感、活気を加え、完璧な音色を調整することができます。また、モダンでクリーンなサウンドや、ノスタルジックでビンテージな温かみ、または好みに合わせて作り上げるより過激なスタイルから選択することもできます」と説明がありますが、著名スタジオのサウンドをモデリングして好みの音色にミックスしてくれる機能のようです。ひょっとしたら高価なプラグインを購入しないとできなかったような、スタジオシミュレーションが可能になるかもしれません。

これらの機能は、Logic Proのユーザーであればアップグレードは無償。Mac版は3万円。iPad版はサブスクリプションで月額700円か年額7000円。どちらも5月13日から提供が開始されるので、使えるのが楽しみです。AppleシリコンのMプロセッサであれば、どの機能も使えます。SessionPlayersだけはAプロセッサでも利用できる可能性があります。

今回のLet Looseイベントで筆者が一番良かったのは、このLogic Pro無償アップグレードです。お金を全くかけずに待望だったベースとキーボードのバーチャルミュージシャンが付いてくるのですから。

UdioやSunoで作った曲のコード進行を入力し、Session Playersでパート置き換えや強化をして、さらに完成度を上げる、そしてマスタリングにはChromaGlowを使って仕上げる、といった楽しみ方もできそうです。

《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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