コロンブスの卵的な発想で低コスト化を実現した「スマートメディア(5V)」(容量0.5MB/2MB/4MB・1996年頃~):ロストメモリーズ File002

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宮里圭介

宮里圭介

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需要のわからない記事を作る自由物書き。分解とかアホな工作とかもやるよー。USBを「ゆしば」と呼ぼう協会実質代表。

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[名称] スマートメディア(SmartMedia、SSFDC)
(製品名) MG-2
[種類] フラッシュメモリー
[記録方法] 専用端子(22ピン)
[メディアサイズ] 37×45×0.76mm
[記録部サイズ] ----
[容量] 0.5MB、2MB、4MB
[登場年] 1996年頃~

ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。

スマートメディア(5V)は、東芝が開発したフラッシュメモリーメディア。1996年に標準化推進団体となるSSFDCフォーラムが設立され、採用する機器が登場するようになりました。

SSFDCは「Solid State Floppy Disk Card」の略称で、スマートメディアと呼ばれるようになる前の正式名称。Solid Stateを直訳すると「固体の状態」となりますが、エレクトロニクスの分野では、機械的な駆動部がない半導体を指すことが多く、特に記憶媒体では、フラッシュメモリーを使っているという意味が濃くなります。今を時めくSSDも、「Solid State Drive」の略称ですね。

つまりSSFDCには、「フラッシュメモリーをフロッピーディスクのような使い勝手にしたカード」という意味が込められているのでしょう。そんなSSFDCですが、略称としては長く呼びにくいこともあってか、フォーラム設立の半年後には「スマートメディア」(SmartMedia)と名称が改められました。

スマートメディア最大の特徴は、コントローラーを載せないことで低価格化を実現したこと。ICチップの端子をそのまま引き出したようなものなので、むしろ、DIPとかSOPとかBGAなどと同じパッケージのひとつ、と言った方が正しいです。

実際、4MBメディアとなるTC58V32ADCのデータシートを見てみると、TSOPパッケージのTC58V32AFTと共通になっており、ただのパッケージ違いだというのがよくわかります。

そんなスマートメディアですが、登場まもなく問題が発生します。その最たるものが、動作電圧の変更です。

登場前の準備段階では5Vが主流となっていたフラッシュメモリーも、省電力化の流れから、1996年末には3.3V動作の製品がサンプル出荷されるように。また、スマートメディアも1997年に3.3Vモデルが登場しています。これにより、同じ名前のメディアなのに従来の機器では使えないという、互換性の問題が出てしまいました。

といっても、5Vのスマートメディアしか使えない機器はそれほど数は多くなく、一般向けのデジカメで言えば、富士フイルムの「DS-7」と「DS-8」、セガの「DIGIO」、ミノルタの「Dimage V」、アップルの「QuickTake 200」(DS-8のOEM)くらいでしょうか。

また、メディアの切り欠きを左右入れ替えることで、5V専用機に3.3Vメディア、もしくは、3.3V専用機に5Vメディアは入らないよう工夫されていました。もちろん裏返せば入ってしまいますが、ピンが接続されることはないため、取り違えによる故障を防げます。

そもそも対応機器が少ない、メディアの買い間違いはあっても機器の故障は防げる、ということもあって、今振り返ってみると、大きな混乱なく3.3Vへと移行できた印象があります。

ただし、1997~1998年頃に発売されたローランドのシンセサイザーやサンプラーは微妙。開発時期の関係で3.3V対応が遅れたのだと思いますが、これらの機器では不幸にも、時代遅れの5Vスマートメディアが採用されてしまいました。安価な8MBや16MBのスマートメディアを買ったら3.3V品で使えなかった……そんな悔しい思いをした人もいたのではないでしょうか。

ということで今回は、初期の製品となる5Vのスマートメディアを紹介します。

SSFDCフォーラムの公式的には2MBと4MBのみだが認められていないっぽい0.5MBもある

スマートメディアは厚みがわずか0.76mmとなっており、他のフラッシュメモリーメディアと比べ、かなり薄く作られています。サイズは37×45mmで、SDカード2枚ぶんより少し大きい程度。当時は「切手サイズ」とか「クレジットカードの約3分の1」といった言葉で表現されていました。

この薄さやサイズは5V/3.3V共通ですが、5Vのスマートメディアは端子面を上にしたとき、左上の角がカットされた形状となっているのが特徴です。また、端子の下には容量が書かれていますが、その末尾に動作電圧を表す「5」の数字が付け加えられていることからも区別できます。

端子の下、容量表記の右にある円形のスペースは、書き込み禁止エリア。この場所に付属のシールを貼ることで、書き込まれた内容の削除や追加の書き込みを禁止できました。

裏面を見てみましょう。こちらには端子もなく、発売元のメーカー名や型番が刻印されているだけです。このメディアであれば「FUJIFILM MG-2」と書かれているように、富士フイルムのメディアとわかります。

ちなみにこのMG-2は、DS-7やDS-8といったデジカメに同梱されていたものと同じ。実際これも、ジャンクで入手したDS-8から引っこ抜いたものです。

スマートメディアは2MB、4MB、8MB、16MB、32MB、64MB、128MBと容量を増やしていきましたが、このうち、8MB以上は3.3Vのみ。5Vは2MBと4MBしかありません。東芝のリリースやSSFDCフォーラムにあった情報でも、これ以外の容量は出てきません。

ただし例外があります。それが、セガから発売されたデジカメ「DIGIO」用のメディアです。DIGIOは1996年に発売されたデジタルカメラで、2万9800円というかなり安価な製品。価格を抑えるためか、0.5MBという小容量のスマートメディアが同梱されていました。

よく見ると、端子の下に「0.5MB-5」という文字が読み取れます。

黒がほとんどのスマートメディアで、青色なのもまた、特殊と言えるでしょう。

ちなみに、この0.5MBのスマートメディアは「Digital Film」として、2480円で発売されたようです。裏面には「SEGA」の文字はあるものの、製品型番らしきものはありません。

そうそう、薄々気づいている方もいるかと思いますが、こちらもジャンクで入手したDIGIOから引っこ抜いたものです。

交換できるフラッシュメモリーを最小限の手間で実現

フラッシュメモリーを使った安くてコンパクトなメディアを作るにはどうすればいいか、と考えた結果、「ICチップをそのまま着脱すればいいんじゃね?」というアイデアにたどり着いたのが、スマートメディアのすごいところ。まさに、コロンブスの卵です。

単なるICチップのパッケージ違いですから、これ以上安くするのは不可能なレベルでの低価格化が可能です。また、間にコントローラーが入らないため、速度面でもフラッシュメモリー本来の性能を引き出せます。そういう意味では、究極のフラッシュメモリーメディアといっていいかもしれません。

ただし、そのICチップごとの差異を全て機器側で対応しなければならない、というのがネック。スマートメディアの製品数が少ない間はいいのですが、容量のバリエーションが増える、データアクセスのタイミングや手順が変わる、ICチップの製造元が増えるといったことがあると、動作確認と対応の手間が激増していきます。手を抜いてしまうと、同じスマートメディアがA社の製品では使えるけどB社の製品では使えない、といったことが起き、製品の信用問題になってしまいますからね。

こういったICチップごとの差異はコントローラーで吸収するものですが、そのコントローラーがないのが仇となるわけです。また、コントローラーがないと複数のICチップを搭載することが難しく、大容量化しづらいという問題も抱えることになります。

とはいえ、こういった問題が顕著になってきたのはもっと後の話。5Vスマートメディアには関係ありません。トラブルが少なく、簡単に交換でき、そして安い。登場当時としては、かなり理想に近いフラッシュメモリーメディアだったのではないでしょうか。

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参考文献:

《宮里圭介》
宮里圭介

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