海外で好調のGalaxy S23シリーズ、日本では販路拡大とオンライン販売強化でシェア拡大を目指す(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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サムスン電子は、日本で発売する「Galaxy S23」と「Galaxy S23 Ultra」を発表しました。ドコモとKDDIは例年通り両機種を販売する予定で、楽天モバイルはGalaxy S23のみの取り扱いになります。

2月に米サンフランシスコで発表されたGalaxy S23シリーズの中には、Galaxy S23の大画面版にあたる「Galaxy S23+」も含まれていましたが、昨年に続き「+」モデルの日本展開はなく、2モデルに集中していくようです。

▲サムスン電子はGalaxy S23 Ultra(左)とGalaxy S23(右)を、4月20日に日本で発売する。ドコモ、au、ソフトバンクが取り扱う

日本上陸、と言ってもGalaxy S23シリーズ自体は2月に発表されたもので、海外ではすでに発売済み。2月27日から3月2日(現地時間)に渡って開催されたMWC Barcelonaでも、サムスンブースに実機が展示されていました。筆者としては、すでに海外で2回触っているうえに、Galaxy S23 Ultraは海外版のレビューもしているので、あまり新鮮さを感じられないのが正直なところです。


どちらかと言えばマイナーチェンジのように見えるGalaxy S23シリーズですが、NoteとUltraを融合させた第一弾となるGalaxy S22シリーズと比べ、デザインの統一感が上がり、完成度も高まっています。

特にGalaxy S23 Ultraは、Galaxyとして初めて2億画素のカメラを採用したほか、「Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxy」のAI処理を合わせたカメラの画質が魅力的。外観は先代モデルを継承しているものの、中身はしっかりブラッシュアップされ、完成度が高まっています。

▲背面のデザイン、特にカメラ回りのそれに共通性を持たせてシリーズ感を高めた
▲Galaxy S23 Ultraは、シリーズ初の2億画素カメラを採用。AIの処理能力向上と相まって、暗所でもまるで光があるかのように明るく写る

こうした点が評価されたのか、サムスン電子によると、海外での予約や販売実績は好調だと言います。例えば同社のお膝元である韓国では、Galaxy史上最大の予約数を記録。インド、フランス、ブラジル、台湾でも、過去最高や前年比で2倍の予約を達成するなど、幸先のいいスタートを切っているとのこと。日本でも同様の実績を上げられるよう、サムスン側もこれまでトライしていなかった販売方法を模索しているようです。

▲海外では、幸先のいいスタートを切れていると言う。こうした実績を引っ提げてアピールできるのは、発売が遅いマーケティング上のメリットにもなる

その1つが、オンラインショップ限定のカラーと容量。Galaxy S23 Ultraのみとなりますが、ドコモは512GB版、auは512GBと1TBをそれぞれのオンラインショップで取り扱います。オンライン限定版はカラーがファントムブラック1色。

つまり、この色を買おうとすると必然的にストレージの容量が512GBもしくは1TBになるということです。逆に言えば、512GBなり1TBなりのストレージがほしい場合、選択肢はファントムブラックのみになります。

▲ファントムブラックの512GBをオンライン限定で販売するドコモ
▲auは、512GB版に加えて1TB版もオンライン限定で展開。カラーはドコモと同じファントムブラック

パターンが限られてしまっているのは少々残念なところですが、シェア1位や2位が定位置になっている海外市場と比べると、日本はライバルも多く販売量が限定的。結果として、これまでもカラバリが減っていたり、ストレージの容量が選べなかったりと、選択肢が減っていました。

特に後者のストレージは、Galaxy S22シリーズのときも256GBの一択。microSDカードが非対応になる中、これではストレージが足りないという声も上がっていました。カラバリ&販路限定ですが、512GB以上を選べるようになったことは、うれしい人もいるはずです。

▲ファントムブラックの実機。スマホとしてベーシックなカラーだが、高級感があるたたずまいだ
▲発表会に展示されていた端末の容量は512GBだった

しかも、予約特典として「Wストレージキャンペーン」も実施します。これは物理的にストレージを換装して容量を2倍にするわけではなく、1つ下のモデルとの差額を還元する仕組み。512GBが256GBと同等、1TB版が512GBと同等の価格になるというわけです。

つまり512GB版であれば、キャリアの店頭でも販売されている通常版と同価格になるということ。カラバリはファントムブラックだけになってしまいますが、それ以外であえて256GBをチョイスする理由がなくなる大盤振る舞いです。

▲予約特典として、Wストレージキャンペーンを展開。256GB版と同価格になるということで、512GBの人気が出そうだ

もう1つは、楽天モバイルへの展開です。楽天モバイルも、かつては「Galaxy S10」や「Galaxy Note10+」を取り扱うなど、サムスンのフラッグシップモデルを販売していましたが、“無料の回線”を期待していたユーザーとの相性は悪く、あえなく撃沈。一方で、22年には久々のフラッグシップモデルとなる「Galaxy Z Flip4」を発売するなど、徐々にラインナップを広げてきました。

冒頭で述べたように、楽天モバイルが販売するのはGalaxy S23だけではあるものの、ユーザー数やユーザー層を考えると、上出来と言えるでしょう。Galaxy Sシリーズに限ると、Galaxy S10以来、約3年半ぶりのこと。ようやく、楽天モバイルのフラッグシップモデルを販売する体制が整ってきたと言えるかもしれません。サムスン電子にとっても、1キャリア販路が増えることは歓迎できるはずで、着々と販路を広げるチャレンジをしている様子がうかがえます。

▲Galaxy S23のみでカラーも2色と他社より少ないが、楽天モバイルも久々にGalaxy Sシリーズを取り扱う

あとはサムスン電子自身の販路で販売するオープンマーケット版があれば……と思うところではありますが、キャリア経由の市場が大きい日本では、なかなかそれが難しいのも事実。お得意様向けに納入した端末とガチンコで競合してしまう製品を自分たちで売るというのは、なかなか勇気がいることです。

一方で、時期はズレていますがシャープやソニーがフラッグシップモデルを自身で販売している実績もあり、サムスン電子の対応にも注目が集まります。昨年、「Galaxy M23 5G」でオープンマーケット市場に乗り出しているだけに、次の一手にも期待したいところです。


《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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