Google初でGoogle発のフォルダブルスマホ、「Pixel Fold」が7月31日に発売されます。現在、Googleストアとドコモ、au、ソフトバンクでは予約を受け付け中。
サムスンのGalaxy Z Foldシリーズに対抗する、横開きスタイルのフォルダブルスマホとして注目を集めている製品です。発売に先立ち、その実機をお試しすることができました。
筆者は「Galaxy Z Fold3 5G」「Galaxy Z Fold4」と、2世代連続で横開きのフォルダブルスマホを使い続けており、“フォルダブル歴”はそろそろ2年になります。閉じると簡単に片手操作ができる一方で、開くとコンパクトなタブレット大になる横開きフォルダブルは、一度使うとやみつきに。折れないスマホにはなかなか戻れなくなります。
Pixel Foldもそんな横折りスタイルですが、閉じたとき、開いたときのどちらも、Galaxy Z Foldシリーズとは大きく仕様が異なります。シュッと細長いGalaxy Z Foldに対し、Pixel Foldはむしろ一般的なスマホよりも縦の長さが短く、スマホっぽさが強調されています。
そのぶん、片手での操作はしづらくなっていますが、画面に表示される映像が自然。キーボードも十分なサイズになり、操作はしやすいと感じました。この点は、一長一短と言えるでしょう。
折りたたんだとき、ピタッと画面と画面がくっつくのも、Galaxy Z Foldユーザーが指をくわえてうらやましがるポイントではないでしょうか。すき間がなくなるため、そのぶん折りたたんだときにはスリムになり、ポケットなどにしまいやすくなります。ただし、重量はGalaxy Z Fold4の263gに対し、Pixel Foldは283gと、ジャスト20g重くなっています。
手に取って比べてみると、やはりPixel Foldの方がズッシリした印象。イージーパンツのようにベルトのないパンツをはいているときは、重力で脱げてしまわないか注意が必要です(笑)。
開いたときのアスペクト比は、Pixel Foldの大きな差別化ポイント。Galaxy Z Foldは初代から、スマホで一般的な“縦長のまま”画面を大きくするのに対し、Pixel Foldは開くとランドスケープモード、いわゆる“横長”画面になります。対Galaxy Z Foldの視点で見ると、いったん画面を開き、本体を横に倒す必要がなくなるというわけです。
このメリットが最大限発揮されるのは、ブラウジングや電子書籍アプリを開いているようなときでしょう。PC用サイトは横長のディスプレイを前提にして作られているため、Pixel Foldの方が自然に見ることができます。
また、電子書籍は画面を開くだけで見開き表示に。アプリ側で特別な対応は必要ないようで、筆者が普段から使っている「eBookJapan」のアプリも、そのまま見開きになりました。
Galaxy Z Foldを使い始めてからというもの、スマホでマンガを読む機会が増えた筆者ですが、Pixel Foldならその際の操作がよりスムーズになると言えるでしょう。
一方で、スマホで流行りのWebtoon、いわゆる縦スクロールマンガは、Galaxy Z Foldを“閉じて”読んだ方が1ページに収まる情報量が多くなります。韓国発のコンテンツなだけに、そこは韓国メーカーであるサムスンに軍配が上がります。
難点だと思ったのが、「dマガジン」で雑誌を読むとき。上記のeBookJapanと同様、開くと自動的に見開きで表示されますが、dマガジンはベースがA4なりA4変形なりの雑誌をそのまま載せているものが多く、見開きだとサイズ不足で文字が非常に小さくなってしまいます。キャプションなどは、判別不能といってもいいでしょう。
筆者がdマガジンを使う際には、単ページ表示にしていますが、この場合だとPixel Foldでは逆に、本体を横に回転させなければなりません。横長万能かと思いきや、コンテンツによって一長一短あることがわかってきました。
ただ、Gmailが左右に分割されて画面を戻る必要なくメールをチェックしていけたり、カレンダーが左に月を表示しつつ、右にその日の予定を表示できたりと、横長であることのユーザーインターフェイスは意外と練られている感があります。
こうした点は、Galaxy Z Foldユーザーから見て、うらやましいところ。というのも、Galaxy Z Foldは本体を横に倒さないと、この表示にならないからです。
LINEのように、画面サイズに応じて分割表示に切り替えることは可能なため、やや自社ハード優先のチート感はありますが、ハードウェアとアプリがしっかり連動しているのは好感触です。
一方で、横長ゆえの課題も見えてきました。例えば、横表示がないゲームアプリ。こうしたアプリを開いた状態で起動させると、左右に太い黒帯ができてしまいます。普通に操作はできるので問題ないと言えば問題ないのですが、あまり見栄えはよくありません。
この場合、全画面で表示するには本体を回転させなければなりません。結局のところ、縦長、横長、どちらにもそのメリット、デメリットがあります。
また、開いたときのベゼルの太さは、ちょっと気になるポイント。ギリギリまで攻め、カメラもディスプレイの中に埋め込んでしまったGalaxy Z Foldの方が、没入感はあります。とはいえ、枠の中にディスプレイをはめこんだようなスタイルは、好き嫌いが分かれるポイントかもしれません。
個人的に便利だなと思ったのは、半開きの状態のまま、Pixelシリーズの売りでもある、文字起こし機能つきの「レコーダー」を使えるところ。半開き状態にすると、画面上部に文字起こしされた結果が表示されるUIになります。
特に英語など、非母国語で相手と会話しているときにこのスタイルは便利。英語だと日本語以上に認識精度が高いため、相手が話していることを文字で理解するのに一役買います。
Pixelのレコーダーでも同じことはできるものの、机の上に置いておくと相手に文字が丸見えになってしまい、集中力がそがれてしまいます。チラ見しながら会話を進めるには、半開きで置いておけるのがうってつけ。
ただし、設定を変更しないと、ディスプレイがすぐに消えてしまうのが難点です。以前から思っていたことですが、文字起こし中は画面がつきっぱなしになるような設定を入れてほしいと感じています。ポテンシャルが高い機能なだけに、ぜひとも対応をお願いします>Googleさん
カメラは、4800万画素のクアッドPDセンサーで、「Pixel 7」や「Pixel 7a」ともまた違う仕様。ピクセルピッチは、6400万画素カメラを搭載したPixel 7aと同じ、0.8μmです。
超広角と望遠は1080万画素。望遠に関しては光学5倍で「Pixel 7 Pro」と倍率は同じですが、超解像ズームは7 Proの最大30倍に対してFoldは20倍までと仕様には違いがあります。ここは統一してないんだ……というのが率直な感想。
ただ、Pixelの場合、センサーの差分よりもAIでゴリゴリと補正するパワーの方が強く、撮ってみるといつものPixelの写真に仕上がります。
超解像で20倍ズームに対応している点も、Pixel 7や7aに対するアドバンテージと言えそうです。Galaxy Z Foldユーザーの視点で言うと、Galaxy Z Foldは、最上位モデルGalaxy S Ultraの2億画素や10倍望遠などよりカメラの仕様が控え目。同時期のGalaxy Sと同等ではあるものの、若干、物足りなさは残ります。この点は、Pixel Foldいいな、と思いました。
最後に強調しておきたいのが、指紋センサー。Pixelシリーズは画面内指紋センサーになってから認識が遅く、使っているとイラっとすることが多々ありました。
ところが、Pixel Foldはその構造上、電源キーに指紋センサーが搭載されています。Galaxy Z Foldではおなじみの仕様ですが、やはり物理キーがあるぶん、指紋を読み取らせやすいですね。認証を失敗することが、ほぼほぼなくなりました。
約25万円となかなかのお値段なPixel Foldですが、折りたためる利便性を重視するなら、その価値はあると言えるでしょう。
特に昨今、スマホの価格が全体的に上がっており、20万円に迫るハイエンドモデルも増えています。こうした端末と比べると、折りたためるだけ、逆にお得感が出てくるような気もしました。Galaxy Z FoldとPixel Fold、どちらが好みかは大きく分かれそうな印象ですが、少なくとも価格に見合った価値はあると言えそうです。
¥7,290
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)