(参考製品名 「DPC-16」)
[種類] フラッシュメモリー
[記録方法] 専用端子(18ピン)
[メディアサイズ] 25×20×1.7mm
[記録部サイズ] ----
[容量] 16MB~2GB
[登場年] 2002年頃~
ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。
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「xDピクチャーカード」は、オリンパス光学工業と富士写真フイルム(富士フイルム)が開発した、フラッシュメモリーメディア。2社は長年、デジタルカメラでスマートメディアを採用してきたものの、サイズが大きく機器を小型化しにくい、128MBを超える大容量化が難しい、読み書き速度が遅い、といった不満を抱えるようになりました。
この不満を解消するため、スマートメディアに代わるデジタルカメラ用メディアとして作られたのが、xDピクチャーカード(xD-Picture Card)です。
とはいえ、すでに小型のフラッシュメモリーメディアとしては、1998年にメモリースティック、2000年にSDメモリーカードが登場済み。デジタルカメラやPDA、音楽プレーヤーなど多くの機器で利用されており、後発のxDピクチャーカードがこの市場に食い込むには、何か強力なウリが必要です。
大小いくつかの強みがありますが、最大の特徴といえるのが小ささ。メモリースティックDuoが31×20×1.6mm、SDメモリーカードが24×32×2.1mmなのに対し、xDピクチャーカードは25×20×1.7mm。ほぼ同時期に登場したメモリースティックDuoよりも小さく、より小型の機器にも搭載しやすくなっています。
また、厚みが1.7mmと余裕があるため、多層実装が容易になったというのも特徴。これにより、当初から最大8GBという大容量への対応が予定されていました。
これ以外にも、コントローラーを搭載せず、機器から直接制御する方式を採用することで、コストや消費電力を下げているのも特徴です。実際、18ピンある端子の詳細を見てみると、信号名がフラッシュメモリーそのままでした。
こうしてみると、スマートメディアの特徴を色濃く継承しつつ、その欠点であったサイズ、容量などを改善したものがxDピクチャーカードだということがよくわかりますね。
しかし、メモリースティックやSDメモリーカードのようにシリアル/パラレル転送を採用しなかったため、端子数が多い、速度が半導体依存、互換性への不安といった、スマートメディアの不満点も引きずってしまうことになります。
そうはいっても、似た仕様で同じ土俵に上がってしまえば、既に多数の機器が登場している2つのメディアに追い付き、追い越すのは容易ではありません。それならば、全く違う仕様で勝負を挑む方が、まだ勝算があったのでしょう。幸い、当時のオリンパスと富士フイルムのデジタルカメラにおけるシェアはかなり大きく、すぐに普及が見込める市場も見えていました。
ということで、今回はxDピクチャーカードを見ていきましょう。
実は4種類あるxDピクチャーカード
形状は、左辺に切り欠きがあるのと下辺が緩く湾曲していること、その上に爪を引っ掛ける溝があるのが特徴。湾曲があるのは、指先でふれて挿入方向が分かるようにでしょうか。
切り欠きの意味はいまいちわかりませんが、カードケースではここにツメを引っ掛け、ロックできるようになっていました。カードの抜け落ち防止用として使われることが多かったようです。
裏面は、ずらりと18ピン端子が並び、結構な面積を占めています。信号はスマートメディアのようにICと同じ並びにするのではなく、1~8ピンが制御用、10~17ピンがデータ用(9ピンがGNDで18ピンがVcc)といったように、キレイに分かれているのが印象的です。
左右の辺は1段削られており、表裏の逆挿し防止ガイドに。また、下辺には爪を引っ掛けられる突起があり、表の溝と同様、どんな挿し込み方でもメディアを引き抜きやすいよう工夫されています。
書き込み禁止スイッチの搭載はナシ。メモリースティックやSDメモリーカードでもほとんど使われないものなので、このあたりは割り切ったのでしょう。側面の切り欠きをシールで覆うという、5.25インチフロッピーみたいな方式だと、ちょっと面白かったのですが。
xDピクチャーカードには大きく4つの種類があり、1つは2002年9月に登場した最初のシリーズ。ロゴの色が金色というのは、ブランドによらず共通です。
2つ目は、2005年3月に登場した「Type Mシリーズ」。フラッシュメモリーに安価なMLCタイプのものを採用し、より大容量化しやすくなったのが特徴です。容量表記の前に「M」の記号が加えられているほか、ロゴの色が銀色となっています。
3つ目は、2005年12月に登場した「Type Hシリーズ」。従来比2~3倍という速度を実現した、高速モデルとして誕生しました。大容量化により速度面が問題になりやすくなっただけに、待望の高速版といったところでしょうか。記号は「H」で、ロゴの色は水色です。
最後は、2008年4月に登場した「Type M+シリーズ」。安価な大容量版となるType Mシリーズの高速版で、従来比約1.5倍という速度を実現したのが特徴です。記号は「M+」で、ロゴの色はType Mシリーズとおなじ銀色。
販売ブランドは、オリンパスと富士フイルムがほとんど。参考として個人売買サイトでの出品を見てみると、少数ですが、東芝、コダック、サンディスク、レキサーなどがあったようです。ただし、サンディスク、レキサーはパッケージだけのようで、中身はオリンパスなどの他社ブランドでした。少々困惑します。
また、コダックはTypeによらず、ブランドは赤、ロゴは金色で統一していたようです。ロゴの色についてはオリンパスと富士フイルムが示し合わせていただけで、規格としての強制力はなかったのかもしれません。
ちなみに、販売ブランドが違っていても、中身は同じ。当初は東芝だけが製造していましたが、後にサムスンも加わりました。
サイズで負け、汎用性で見劣りし、互換性で一部問題も
xDピクチャーカードは小型サイズだというのがメリットでしたが、直後の2002年11月、24×18×1.4mmとさらに小型な「RS-MMC」が登場してしまい、立場が微妙に。
さらに続く2003年5月には、サンディスクが20×21.5×1.4mmというminiSDカードを発売。完全にサイズの優位性はなくなってしまいました。
ただし、この2つはあくまで携帯電話、PDA向けという色が強く、デジタルカメラで使われることはほとんどありませんでした。それもそのはず、デジタルカメラくらいのサイズであれば、そこまで小さいメディアが必要ないからです。
つまり、メモリースティックDuoやSDメモリーカードと比べて小さいというメリットは弱く、あえてxDピクチャーカードを選ぶ理由にならなかったわけです。さらに、xDピクチャーカードは小型なのにピン数が多いため、基板上でのパターン配線が複雑になりがちだというデメリットもありました。
また、ユーザーが使う場合でも問題があり、中でも一番の問題となったのが互換性です。当初から8GBまで対応するとしていながら、大容量のType Mシリーズは古い機器では使えない、もしくは、一部機能が使えない……なんてことがありました。さらに、高速なType HシリーズやType M+シリーズも、古い機種では速度が出ないという問題が。ファームウェアのアップデートである程度は解決できていますが、それでも限界があります。
結局、コントローラーで半導体の差異を吸収できないため、使用できるのが動作確認済みの半導体に限られてしまう、新しい半導体が採用されるたびに機器側が対応しなくてはならない、という、スマートメディアと同じ問題を抱えてしまいました。さらに、数が出ないことからコストが高くついてしまい、せっかく安く作れるというメリットが台無しになってしまったのも痛いところです。
xDピクチャーカードの採用は広く呼び掛けられていたものの、実際にデジタルカメラで採用したのはオリンパスと富士フイルム、そしてコダックくらいと低迷。また、著作権保護機能が搭載されず、スマートメディアと同じ固有IDが付加されているだけということもあり、音楽プレーヤーといったデジタルカメラ以外の機器での採用もほぼありませんでした。
最初の発表会で、
「xD-Picture Card」という名称は、eXtreme Digital(最先端のデジタル)映像情報を記録、保存、伝達するeXcellent(すばらしい)記録メディアという想いを込めて名付けました。
といっていたように理想は高かったのですが、現実は厳しかったようです。
xDピクチャーカードに対応するデジタルカメラは2008年頃を最後に途絶え、メディアも富士フイルムが2010年12月に生産・出荷を終了。最大容量は2GBまでで、当初予定していた8GBまで増えることなく消えていきました。
参考:
「xD-Picture Card Technical Information Sheet」, 富士フイルム, WaybackMachine
「XD-Picture Card」, AllPinouts
「高速タイプの「Type Hシリーズ」を新発売」, オリンパス
「xDピクチャーカード」, ウィキペディア
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