ソニーの新型ハード『PlayStation Portalリモートプレーヤー』発表。実機で遊んできた

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Ittousai

Tech Journalist. Editor at large @TechnoEdgeJP テクノエッジ主筆 / ファウンダー / 火元

特集

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が、プレイステーション初のリモートプレイ専用機『PlayStation Portal リモートプレーヤー』と、純正ヘッドセット『PULSE Eliteワイヤレスヘッドセット』、純正イヤホン『PULSE Explore』を一挙に発表しました。

3製品とも、低遅延のロスレスオーディオを伝送する新しいワイヤレス技術『PlayStation Link』に対応することが特徴です。

発表前にソニーで試遊してきましたので、製品紹介と実際に触ったインプレッションをお伝えします。

リモートプレイ専用機PlayStation Portal リモートプレーヤー


PlayStation Portal (プレイステーション・ポータル)は、PS5にインストールしたゲームをWiFi経由でストリーミングして遊ぶリモートプレイ専用機。

今年5月のPlayStation Showcaseで、開発名『Project Q』として予告されていた製品です。

正式名はプレイステーション・ポータブルならぬPlayStation Portal。Valveのゲームのポータルと同じ、PS世界への窓を開く意味合いです。


リモートプレイはPS3時代から続くプレイステーション自慢の機能。映像・音声とコントローラの信号をワイヤレス転送することで、ゲーム自体は据え置きのゲーム機本体で動かしつつ、プレイは場所を選ばず携帯機など軽いデバイスで楽しめる技術です。

いつもゲームを遊ぶ大画面テレビが家族に専有されているとき、テレビを置いていない部屋で遊びたいときなど、WiFiが届くかぎり好きな場所で好きな姿勢で、据え置きゲーム機のゲームを遊べます。

PS5も当然ながら対応しており、スマートフォンやタブレットでPS5ゲームが遊べるPS Remote Play アプリを以前より提供しています。

今回正式発表された PlayStation Portal は、「リモートプレーヤー」の製品名のとおり、このリモートプレイのために作られた専用デバイス。

本当にリモートプレイ専用で、タブレットとしてアプリをインストールするのはおろか、原理的にはリモートプレイに近いクラウドゲームも使えません。インターネット経由のリモートプレイには対応します。

形状としては、PS5のDualSenseコントローラを真っ二つにして、間に8インチ1920 x 1080フルHDの液晶ディスプレイを挟んだ形そのもの。

主な仕様は、

  • 8インチ1920 x 1080 フルHD液晶、60Hz

  • アダプティブトリガー、ハプティックフィードバック、仮想タッチパッド対応

  • PlayStation Linkワイヤレス・オーディオ対応、3.5mm有線オーディオジャック

  • インターネット経由の自宅外リモートプレイにも対応、クラウドゲーミングは非対応

  • 2.4GHz帯および5GHz帯WiFi対応

  • 充電はUSB-C端子(USBオーディオ出力は非対応)

スマホやタブレット用に配信中のPS Remote Play アプリは画面タッチのバーチャルコントローラ操作のほか、外付けコントローラにも対応するため、タブレットとゲームコントローラを揃えれば、PlayStation Portalに近い状態で遊べることは遊べます。

PlayStation Portal ならではの点は、

・画面が一体化した携帯機スタイルで、DualSenseコントローラの独自機能が使える

おそらく最大の魅力は、PS5の看板機能のひとつ、DualSenseコントローラのアダプティブトリガー(可変抵抗トリガー)やハプティックフィードバック(表現力の高い振動)、タッチパッドといった機能がそのまま再現できること。

アダプティブトリガーもハプティックフィードバックも、なければ遊べない必須の機能ではないものの、ゲームの体験を補完する技術として、PS5ゲームの没入感に貢献しています。例えればただのステレオとサラウンドや空間オーディオのようなもの(通常2D上映と4D上映、はさすがに大げさかもしれませんが)。

PS5実機で有効にして遊ぶのに慣れると、他のコントローラやプラットフォームで同じゲームを遊んでも微妙な違和感や物足りなさが残るほど。

一部のゲームではありますが、特にアダプティブトリガーの引っかかりを手がかりにした操作などは、他のコントローラを使う場合には別ボタンになり、PS5に慣れていると混乱することすらあります。

PlayStation Portal はその点、真っ二つになったDualSenseそのものなので(※)、ボタンの配置も質感も、アダプティブトリガーもPS5そのもの。同じゲームを、体験を損なわずに楽しめます。

※正確にはDualSenseより微妙に小さい。スティック等はPS VR2専用のSenseコントローラと同じ大きさ

・軽量で手軽なリモートプレイ専用設計

リモートプレイ自体はスマホやタブレットでも遊べますが、PlayStation Portal はコントローラ一体化でワイヤレス接続などの手間がなく、スマホやタブレットとコントローラをたとえばBluetoothで接続する際のわずかな遅延もありません。

また完全に専用機なので、スマホのようにアプリを選んでログイン等も不要。セットアップを済ませれば、電源を入れて接続してすぐに自分のPS5が遊べます。汎用のAndroid端末ではありません

重量については現時点で非公開で、持ってみた感覚でしか伝えられませんが、おそらく実際に持つと外見に反して意外にも軽いと感じるはず。

これは製品の前提として、携帯ゲーミングPC等と違い本体で演算する必要がないため、ハードウェアとしてはそこそこ性能のタブレットとコントローラだけで実現できることが理由です。

小型タブレットとして8インチはそこそこの大きさで、コントローラもモバイル端末にありがちな薄く簡易的なものではなく、DualSenseの本格仕様なので、軽さ自体を目標にした設計ではありません。一方、本格的なコントローラであることでグリップが良く、絶対値よりも実用上軽く「感じられる」点もあります。

バッテリー駆動時間については非公開。試用も短時間だったので確定したことはいえません。が、こちらもリモートプレイ専用端末であること、Portal本体ではゲーム自体を処理せず単なるストリーミング映像として流していることから、一般的には携帯ゲーム機や携帯ゲーミングPCよりも長く、タブレットでストリーミング動画を見ているときとさほど変わらない水準になるはずです(コントローラ部分で映像だけよりは消費しますが)。

(あくまで参考として。Steam Deck や ASUS ROG Ally など携帯ゲーミングPCはすべてを自前で処理するため、重いPC版のAAA級ゲームを遊ぶ場合はぎりぎり遊べるフレームレートの範囲内で高い設定にしても、PS5版より低いグラフィック表現で、ファンを盛大に鳴らしつつあっという間にバッテリー切れになります。1時間遊べるか90分か、それとも45分かは、最大TDPをどこまで高く設定できるかに依存。


これは優劣というより当たり前の話で、携帯機が数Wから高くても数十Wでディスプレイも演算処理もすべて賄うのに対して、据え置きならば本体で数百ワット、テレビはまた別になるため。)


単体で動作する携帯ゲーミングPC等は、原理的にほぼ無遅延、かつWiFi環境を気にせず遊べる利点がありますが、リモートプレイ端末はネットワーク環境が良い場所でしか使えないかわりに軽く静かで長時間遊べることが特徴です。

・ロスレス低遅延の新ワイヤレス・オーディオ規格 PlayStation Link にネイティブ対応

新規格 PlayStation Link に対応し、同時発表のプレイステーション純正イヤホン PULSE Explore やヘッドセット PULSE Elite にそのまま、低遅延で接続できます。

PlayStation Linkは一般的なBluetooth接続より遅延が少なく、ロスレス音質で伝送できるゲーミンググレードのワイヤレスオーディオ技術。

リモートプレイは、ローカルでWiFi状況が良ければ非常に低遅延で遊べるものの、手元からもう一段階Bluetoothなどのワイヤレスを挟んでしまうと遅延に遅延を重ねる状態になり、望ましくありません。

遅延を低減するため、ワイヤレスゲーミングヘッドセットの多くはUSB接続の無線ドングルを介して接続する方式を採用しています。PULSE EliteやPULSE ExploreもPS5やPC等と接続するためドングルが付属しますが、PlayStation Portal は本体がネイティブで対応するため、さらにドングルを挿す必要がなく、専用の接続ボタンを押すだけで簡単に PlayStation Link対応機器と接続できます。

本体とのあいだが無線になるリモートプレイだけに、コントローラは直結、音声は独自の低遅延方式でできるだけ遅延を削り違和感のないプレイを実現するための設計です。

PS3とPSP、PS4とPS Vitaを継ぐ新たな相棒

実際に遊んだ印象は、結論からいうと「分かった、分かったから早く売ってくれ!」

個人的にリモートプレイの愛用者で、PS3時代にQ-Gamesが開発した高精度な「地球」ビジュアライザをPSPに映して感動して以来、PS VitaでもAndroidアプリの PS Remote Play でもリモートプレイを頻繁に使ってきました。

携帯ゲーミングPCにリモートプレイアプリを入れて遊んだり、クラウドゲーミングやリモートプレイ専用機の Logitech G Cloudをわざわざ米国で購入して遊んだりすらしています。


その目線から見ても、PlayStation Portal はリモートプレイ専用機として完成度の高い仕上がり。というより、違和感がなさすぎてPS5の携帯機が完成したような錯覚すら覚えます。

良かった点を羅列すれば、まず画面が8インチと大きく明るく、PS5ゲームの美しさを十分に伝える高画質であること。

このクラスの携帯ゲーム機やゲーミングPCは7インチ画面の採用が一般的ですが、対角でわずか1インチ広いだけで、細かな文字も読みやすく歴然と遊びやすくなります。

画面の大きさそのものと同時に、ディスプレイ部分が薄くベゼルが細く、相対的にスリムなのも大きい点。リモートプレイ専用機にしたことで、本体側の処理が軽くモバイルOSのタブレット相当で済むため、携帯ゲーミングPCのような物々しさがなく、手軽に気楽に扱えます。

コントローラがDualSenseそのものでグリップが良く、慣れたアダプティブトリガーが使えるのも好印象。タブレットにDualSenseを接続はできますが、タブレットをスタンドで立てるなりする必要があるため、携帯機スタイルで扱えるのは圧倒的に楽。

試遊ではDualSenseのショーケース的な ASTRO's PLAYROOMや、高速3Dアクション Returnal を遊んでみましたが、アストロのわざとらしいほどのハプティックフィードバックはPS5実機と同じ感覚で、床の硬さや砂の混じった風に吹かれるチリチリした感覚までが手元で伝わります。

Returnal の、トリガー半押し(半引き)と全引きを使い分けるセカンダリファイヤも、PS5実機そのままに直感的。

やや脱線してハプティックフィードバック自体の特性、あるいはカラクリの話をすれば、振動が繊細になったとはつまり手元でサウンドエフェクトを再生できるようなものであって、何が起きているかを目で見て、耳でも聞いたうえで手にも感じてこそ真価を発揮する、いわば複数感覚の統合で脳を効果的に騙して没入感を得る技術。

従来の大雑把な振動のコントローラでも、手だけではブルブルとしか感じなかったはずのものを、映像と音と同時に感じるからこそドスンであったりザザーであったりと錯覚してきた現象を、もっと高精度に効率的に発生させるようなものともいえます。

なぜ唐突にこんな話をするかといえば、複数の感覚を統合して得る没入感は、それぞれが遅延してズレてしまうと効果が半減してしまうため。(ハプティックフィードバックも、映像と音声を同時に体験するからこそ驚きますが、どの場面か教えず音を消したDualSenseだけ持たせても状況はなかなか通じないはずです)。

PlayStation Portal はこの点で、目で見た映像と耳で聞く音響効果がズレにくいPlayStation Linkネイティブ対応、かつ手でも同時に感じるハプティックフィードバックとアダプティブトリガーがあり、子機としてPS5ならではの感覚を高い精度で再現できている点が出色です。

・原理的には遅延あり。ゲームと場面に依存

遅延に関していえば、これは自宅で実際にリモートプレイを使ったことがあるプレーヤーならばすでにご存知と思いますが、ネット環境が良い限り、特定のゲーム以外ではおそらく言われないと分からない、意識して試さないと分からない程度。

のんびりしたアクションのアストロで操作のしづらさを実感することはなく、遊び慣れたアクションのReturnalで戦闘しても、たとえばボタンを押してから半拍おいてジャンプしたり、回避が遅れたせいで被弾する感覚はありませんでした。

ただ原理的にはもちろん遅延しているため、1フレームを争って反応するゲーム、タイミングがシビアな音楽ゲーム等ではテレビで遊ぶより何故かミスが増えることで分かるはずです。

実際にリモートプレイでゲームをしていて実感するのは、ゲームを選ぶというより場面を選ぶこと。一瞬のパリィが命を分けるようなボス戦や、反応が全ての対人アクションはPS5とテレビで遊ぶとして、同じアクションゲームでもシングルで楽しめる部分や周回・探索などダラダラした部分をリモートプレイで、ダラダラした姿勢で遊ぶといった使い方ができます。個人的にはオープンワールドゲームのサブクエ埋めを、他のことをしつつ遊ぶのが楽。本編は大画面テレビで。

・クラウドゲーミング非対応、インターネット経由の外出先リモートプレイは可能

逆にリモートプレイユーザーとして残念な点を挙げれば、自宅のPS5ではなくソニーのサーバからストリーミングするクラウドゲーミングには非対応

データセンタと通信したほうが、一般家庭のWiFiや回線を経由するより原理的には早くなるはずなので、ここは将来的に対応してほしい点です。

一方で、従来のリモートプレイと同じくインターネット経由でもプレイ可能。自宅WiFi圏内限定ではなく、出先でも速いWiFiさえ来ていれば遊べます

ただし、インターネット経由では経路がどうなるか分からず、環境によって遅延も激しくなるため、遅延の影響が高いゲームを快適に遊べるのは自宅あるいは特にネット環境が良い場所のみと考えたほうが無難です。ソニー的にも、WiFi接続は必須なので持ち歩いてどこでも遊ぶというよりは、自宅のどこでも遊べることを前面に出しています。

一方で、遅くてもつながることが重要、ログインして用を済ませたい、遅延があまり関係ないゲームならばとりあえず遊べることの利点が上回るかもしれません。

・2万9980円で年内発売

PlayStation Portal は2万9980円。発売は年内予定。近日中に予約受付を開始します。

PS5を持っていてリモートプレイを愛用していたり、スマホゲームや携帯機のようにもう少し手軽にPS5ゲームを遊びたいユーザーには確実に刺さる製品です。

追記:

遅延がどんなもんか分からないかぎりはねぇ、というかたは、スマートフォンやタブレットがあればいま実際に手元の環境で試せます

PS Remote Play - Apps on Google Play

「PS Remote Play」をApp Storeで

PlayStation PortalはこれにDualSenseを無線ではなく直結したような製品です。Portal は 5GHz WiFiに対応するため、手持ちのタブレットやスマホが古く2.4GHzのみ対応だったり、極端にアンテナが弱い場合は Portalのほうが快適になるはず。

リモートプレイで遅延がある場合、PS5を有線でルータに接続したり、自宅のWiFiルータを安くても良いので最近の5GHz対応機種にする、置き場所を変える等で改善する可能性もあります。

ソニーの担当者に、家庭のWiFi環境が悪い場合もあるので、何も考えず買うだけで低遅延に接続できるWiFiドングルのようなものを出してあげると親切では?と訊ねてみましたが、リモートプレイはもとからそこまでの帯域幅は必要ないこと、ローカルなので2.4GHz WiFiでも十分に快適に使えると判断した、との回答でした。

追記:「コントローラが付け根からもげそう、接合部が脆そう」に見えますが、 左右コントローラ背面は一枚のパーツ。渾身の力を入れて捻ったり折れば取れないこともないかもしれません。

《Ittousai》

Ittousai

Tech Journalist. Editor at large @TechnoEdgeJP テクノエッジ主筆 / ファウンダー / 火元

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