先週金曜日、マイクロソフトは裁判所に提出する法廷文書を誤って一般公開状態にしてしまい、そのなかから2020年の議論で任天堂を買収する計画が持ち上がっていたことや、次期Xboxの発売時期に関する情報などが発見されています。
この騒ぎは、マイクロソフトに対して米連邦取引委員会(FTC)がActivision Blizzardの買収差し止めを求め、最終的にマイクロソフトが勝利した裁判のその後の司法プロセスにおいて発生しました。誤って公開されてしまった資料には、マイクロソフトのXbox事業に関する100を超える文書が含まれており、そのなかには、マイクロソフト幹部らのメールやゲームの発売スケジュールに関する資料もあるとされます。
特に、マイクロソフトがActivision Blizzardを買収する意向を発表する約1年半前、2020年8月6日にXbox部門の責任者フィル・スペンサー氏がマイクロソフトの商業・マーケティング責任者である沼本健氏との間で交わしたメールからは、スペンサー氏が任天堂を買収するアイデアについて議論しているという内容が明らかになっています。
このアイデアは、マイクロソフトと関係の深い投資ファンドValueActによって株を買い占めることで、任天堂の取締役会を買収受け入れに導こうとする考えを示すもので、メールでは沼本健氏に対してスペンサー氏が「任天堂はわれわれにとってゲーム業界で最も重要な資産だと思う」と切り出し、「これまで何度も任天堂の経営陣と会談を重ねており、米国企業の中で任天堂との協力に関して最も良い立場にあるのはおそらくわれわれだ」としています。
さらに、単純に買収を実行しようとした場合に障害となるのは、任天堂が持つ大量の現金と「最近まで」企業の市場における成長やさらなる株価上昇をあまり望まなかった取締役会だと、スペンサー氏は指摘しています。
スペンサー氏は任天堂の取締役会の反応を「最近まで」としたことについて、かつてマイクロソフトの取締役会メンバーだったValueActのCEO、メイソン・モーフィット氏が「Nintendoの株を大量に取得しており」これがマイクロソフトに「機会を提供する可能性がある」からだと述べています。そして、その機会によって任天堂の取締役会が動かなければ、両社合意による合併という道すじを描くことができないとの考えを、スペンサー氏は述べています。
また、スペンサー氏は「いつか任天堂を手に入れられれば、それは(自分の)キャリアにおける最高の瞬間であり、両社にとって良い一歩になると信じている。ただ任天堂が、彼らの将来が自社のハードウェアから独立して存在することを理解するのには時間がかかっている」として、短絡的な敵対的買収ではなく、長期的な戦略を採っていることを示しました。
なお、マイクロソフトがActivision Blizzardを買収する提案は、ゲーム業界の独占禁止法に関する懸念が高まる中で、世界中の規制当局から厳しい審査を受けています。マイクロソフトは他にも、近年セガやBungie、IO Interactiveといった多くの企業の買収の可能性を探っていることが伝えられています。また初代Xboxの事業立ち上げの際にも、マイクロソフトは任天堂に接触していたことが伝えられています。
ちなみに、今回流出した文書からは「2028年の計画」として、次期Xboxをこれまでのような高性能ハードウェアとして展開するのか、Windowsのように柔軟なハードウェアに対応する戦略をとるのかとの議論の内容も発見されています。
この「2028年」という時期に関しては、昨年英国の市場競争当局に提出された文書の中で、マイクロソフトの弁護士が新しいハードウェアの発売時期の可能性について「早くても2028年の秋までには発売されないと予想される」と述べていたのにも一致しています。