(参考製品名 「HKT-7000」他)
[種類] フラッシュメモリー
[記録方法] 独自インターフェース(7pin)
[メディアサイズ] 47×80×19mm(実測)
[記録部サイズ] ----
[容量] 200ブロック(128KB)
[登場年] 1998年頃~
ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。
ロストメモリーズの記事一覧「ビジュアルメモリ」は、セガが開発した家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」、そしてアーケードゲーム基板「NAOMI」で使われたメモリーカード。ゲームデータが保存できるほか、ビジュアルメモリ単体でも動作するというのが特徴です。
1998年当時の家庭用ゲーム機といえば、1994年に発売されたプレイステーションとセガサターン、そして1996年に発売されたNINTENDO64の争いが落ち着き、プレイステーションが勝者として大きくシェアを握っていた頃です。
この状況を打破すべく、他社に先駆け次世代機となるドリームキャストを投入したのが、セガ。1998年11月27日に発売されたこのゲーム機は、ヤマハと共同開発した光学ディスク「GD-ROM」の採用、モデム標準装備でインターネット接続が可能、OSにWindows CEのカスタム版が利用できるなど、かなり意欲的な製品となっていました。
このドリームキャスト用のメモリーカードとして登場したのが、ビジュアルメモリです。セガサターンのパワーメモリーが大きなカートリッジ形状だったのに対し、大幅な小型化を実現。さらに、液晶ディスプレイや操作ボタン、スピーカーを装備し、ファイルの管理、ミニゲーム、時計といった機能が利用可能でした。
面白いのは、ビジュアルメモリ自体に通信機能が搭載されていたこと。この機能を使えば、ドリームキャスト本体を使うことなくセーブファイルのコピー、ミニゲームでの通信などが可能でした。
ミニゲームは、ユーザーが自分で転送するものと、最初からビジュアルメモリに収録された状態で発売されたもの、大きく2つの種類があります。前者はゲームソフトがあれば転送できますが、後者は基本的にその手段がないため、ビジュアルメモリごと入手する必要がありました。
ちなみに主目的、ドリームキャストのメモリーカードとして使う場合は、コントローラーのスロットへと挿し込みます。このとき、ビジュアルメモリのディスプレイには、プレー中のゲームタイトルやキャラ、情報などが表示できました。
ざっくりとビジュアルメモリの機能を紹介したところで、本体を見ていきましょう。
電池が切れてもデータは消えない!
ビジュアルメモリに搭載されている操作ボタンは、十字キー、SLEEP、MODE、A、Bの5つ。完全な電源オフにはできず、基本的にSLEEPボタンで省電力動作への切り替え、復帰を行います。
ファイル/ゲーム/時計機能の切り替えは、MODEボタン。押すたびに、3つのモードが切り替わっていきます。Aボタンで決定すると、そのモードを利用可能。
電源は、CR2032×2個。マニュアルやパッケージによると、電池の寿命は時計機能を使うだけなら約130日。ミニゲームで遊ぶといった連続使用だと約100時間となっており、あまり持ちません。
その代わり……というわけではないですが、ユーザーによる電池交換が可能で、マニュアルにも交換方法が記載されています。また、裏面の電池カバーにはCR2032の向き、個数が分かるようにイラストが描かれたシールまで貼ってありました。カバーがネジ止めされているので、交換は若干手間ですけどね。
なお、ゲームのセーブデータなどはフラッシュメモリーに書き込まれるため、電池が切れても消えません。電池はあくまで、ビジュアルメモリ単体で使う場合に必要となるだけです。
電池カバーの上にある3つの穴はスピーカー(ブザー)、左の穴はリセットボタン。このリセットボタンを押すと、電池交換時と同じように日時設定画面から始まります。当然ですが、セーブデータは消えません。
本体上部のキャップを外すと出てくるのが、接続コネクター。オス/メス……じゃなかった、プラグ/レセプタクルの2種類が並んでおり、ビジュアルメモリ同士を向かい合わせに接続できるようになっています。
ファイルモードでコピーを選び、ビジュアルメモリ同士を接続すると、セーブデータなどのコピーが行えます。ゲーム機本体を使わずデータのバックアップや移動ができるのは便利ですが、少ない文字数でデータを区別しなくてはならず、間違ってしまう危険もありました。
せっかくなので、中身も見てみましょう。分解は、裏面のネジ4本、内部のネジ2本を外すだけなので簡単です。
裏蓋から外したので、便宜上こちらを基板裏とします。この面にはコンデンサーなど小さなパーツがあるだけで、とくにこれといった面白味はありません。
続いて基板表を見ていきましょう。
こちらは、大きなSEGAのICが1つあるだけというシンプルなもの。フラッシュメモリーは別搭載とはなっておらず、「POTATO」と刻印されているSEGAのICにまとめられているようです。
意外とカラバリや限定モデルが多い
最初に登場したビジュアルメモリは、1998年7月に発売された「あつめてゴジラ 怪獣大集合」。映画「GODZILLA」の公開に合わせて登場したもので、ドリームキャスト本体よりも先に発売されていた、というのが面白いですね。このビジュアルメモリにはミニゲームが収録されており、後に発売されたドリームキャスト用ゲーム「ゴジラ・ジェネレーションズ」と連携可能でした。
ちなみに、ミニゲームが収録されて発売されたビジュアルメモリは、全部で5製品。結構レアです。
通常版が発売されたのは、本体と同じ1998年11月27日。カラーやデザインのバリエーションが意外と多く、半透明のカラーバージョン以外にも、ゲームソフト同梱版、限定版本体同梱版、ドリームポイント交換版、ドリームキャストダイレクト版、抽選プレゼント版などがあります。
先日X(旧Twitter)で、ソニック・ザ・ヘッジホッグ日本公式アカウントから投稿されていた写真は、「ソニックチーム・オリジナルビジュアルメモリ」。直販となる、ドリームキャストダイレクトで販売されていたものの1つです。
多機能なビジュアルメモリでしたが、容量が200ブロック(128KB)と少なめ。ミニゲームを転送したり、大型タイトルのセーブデータを複数保存したりすると、すぐに一杯になってしまいます。
この欠点を克服したのが、「メモリーカード4X」。ディスプレイや各種ボタンを非搭載とし、ファイル管理やミニゲームなどの単体機能を削った、純粋なメモリーカードです。容量は合計800ブロック。頭部にあるバンク切り替えボタンを押し、4つのバンク(200ブロック)を切り替えて使うというものでした。
似た製品は他社からも発売されていましたから、そちらを買って使っていた、という人も多かったのではないでしょうか。
ちょっと話は変わりますが、クラウドファンディングで非公式のビジュアルメモリ後継機「VM2」が誕生していたのが興味深かったので、紹介しておきます。これはドリームキャスト実機で動作するもので、充電式バッテリーの内蔵、microSDカードの採用、USBによるPCとの接続が可能など、多くの部分で機能が強化されています。もちろん、ミニゲームも動作します。
興味があれば、チェックしてみると面白いかもしれません。
参考:
「ビジュアルメモリ」, 関連・周辺機器, ドリームキャスト, セガハード大百科, セガ
大塚祐一, 「ドリームキャスト コンプリート ガイドブック」, 三才ブックス