(参考製品名 「CDQ13G1」「CDRW13G1」)
[種類] 光ディスク(追記型、書換型)
[記録方法] 有機色素、相変化記録、レーザー光(780nm)
[メディアサイズ] 約120(直径)×1.2(厚み)mm
[記録部サイズ] 直径約120mm
[容量] 1.3GB
[登場年] 2001年頃~
ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。
ロストメモリーズの記事一覧「DD-R」「DD-RW」は、ソニーが開発した光ディスク。CDのひとつとして開発されたDDCD規格(Double Density CD、倍密度CD、Purple Book)用のCDメディアで、追記型がDD-R、書換型がDD-RWとなります。
容量は、CD-R/RWの約2倍となる1.3GB。これを実現するため、トラックピッチ(データを記録する渦巻状のトラック間隔)が1.6μmから1.1μm、最短ピット長(データを記録するマークの長さ)が0.833μmから0.623μmへと変更されています。
また、120mmのCD-R/RWでは中心から25~58mmの範囲がデータを記録するプログラムエリアだったのに対し、DDCDでは24~58mmとわずかながら内側に拡張されました。
ちなみに、使用するレーザー光の波長は780nmで変わりませんが、記録/再生時の対物レンズ開口数(NA)は、0.50から0.55へと変更になっています。
トラックピッチを詰める……つまり、トラックを増やして容量を増やすというのはよくある手法で、DDCDが特別というわけではありません。例えば、ドリームキャストの「GD-ROM」は内周部にCD-ROMの互換部分、外周部はトラックピッチを詰めた独自の規格とすることで、約1GBという容量を実現しています。
また、8cmのシングルCD-Rで300MBもの容量を持つ「高密度8センチCD-R」も、トラックピッチを詰めて容量を増やしている光ディスクです。
ちなみに、この2つの光ディスクの正確なトラックピッチは公表されていませんが(たぶん)、勝手に調べてみたところ、最短でGD-ROMが約1.15μm、高密度8センチCD-Rが約1.23μmとなっていました。DDCDは1.1μmですから、GD-ROMにかなり近いですね。
いきなり脱線してしまいましたが、このDDCD規格の光ディスク、DD-RとDD-RWを見ていきましょう。
見た目はCD-RやCD-RWとソックリ
まずはパッケージから。
表に「Double Density」と書かれていますが、それ以上に大きいのが「CD-R」「CD-RW」という文字。このことからも、あくまで正統なCD規格のひとつだと主張しているようにも見えます。単純に、従来のパッケージデザインを継承しただけでしょうけど。
一瞬紛らわしいなと思わなくもないですが、「1.3GB」という容量がでかでかと書かれていますから、まず間違えることはないでしょう。
右下にあるCDのロゴは、左肩に「DD」が追加されたDDCD規格対応のロゴとなっています。
裏返してみると、DD-Rの原産国は台湾で、DD-RWは日本となっていました。
ソニーのCD-Rは基本的に太陽誘電OEMで日本製だったのですが、2001年頃から、製造委託で台湾製のものが登場し始めました。ソニーに限らず、国内メーカーの多くがRiTEKやCMC、PRODISK、LEADDATAといった台湾勢への委託製造へと切り替えていた頃なので、とくに珍しくはありません。
とはいえ、DD-Rのような特殊なメディアが、登場当初から台湾製だというのは意外でした。それだけ、製造技術は従来のCD-Rと変わらない……つまり、価格も同レベルまで下げられるということだったのでしょう。
実際、ドライブ登場時でDD-Rの価格は300円くらい。DD-RWでも600円くらいでしたから、ソニーブランドのメディアと考えれば、そこまで高くはありませんでした。
続いて、光ディスク本体を見てみましょう。
パッケージ同様、レーベルには「Double Density」という文字が入っており、CDロゴもDDCD規格対応のものです。ここにも大きく容量が書かれていました。
ソニーから発売されたCD-Rのデザインを踏襲しており、DD-R/RWだからといって特別なデザインになっていません。あくまで、CD-Rと同じ扱いをしています。
続いて裏側の記録面です。
DD-Rの記録面は緑色が強めとなっており、有機色素はシアニン系でしょうか。内周に書き込まれている文字列から、委託先がどこか分からないかと調べてみたところ、どうやらLEADDATAである可能性が高そうでした。
DD-RWは日本製。ディスク内径部にある製造番号と思われる文字列がリコーのCD-RWメディアと酷似していたので、リコーへの製造委託という線が濃厚です。
トラックピッチが違うとはいえ、DD-RとCD-R、DD-RWとCD-RWはそっくり。肉眼でわかるようなピッチの差ではないため、記録面で見分けるのは困難です。
DVDへの移行で、1年経たずに消えていくことに
DDCDは物理的に異なる新しい規格とはいえ、使用されている技術はCD-RやCD-RWの延長で、ほぼ変わっていません。設計や製造も大きく変えずに済むため、新しい大容量のCD-R/RWとして普及する可能性は十分ありました。
しかし、DD-R/RWドライブは2001年4月に発売されたものの、すでにデータ向けとしては1998年から2.6GB(両面5.2GB)のDVD-RAMが登場済み。容量を重視するのであれば、こちらの方が有利です。
また、DVD-R(DVD-R for General)についても、ドライブが数か月後に発売されるというタイミング。いくらDD-R/RWが1.3GBとCDの2倍だといっても、DVD-Rの4.7GBと比べれば見劣りしてしまいます。
ストレージとしての光ディスクは、DVDへの世代交代が確実視されていただけに、2001年のDDCD登場はあまりに遅すぎました。せめて、DVD-RAMが登場した1998年あたりであれば、また違った結果になっていたと思いますが……。
結局、ドライブ製造メーカー各社はDVDへと移行。ソニー製のDVDドライブですらDDCDに対応しておらず、DDCDはマイナーな規格として消えていきました。
参考:
「記録容量1.3GBの「Double Density(倍密度)CD-ROM/-R/-RW(仮称)」規格を策定」, ソニー
「1.3GBの大容量記録を実現する「Double Density(倍密度)CD-R/RW」規格に対応した内蔵型CD-R/RWドライブ発売」, ソニー
「CRX2000L」, ソニー
「CDQ13G1」, ソニー
「CDRW13G1」, ソニー
「CD-Rメディア情報(2001年3月)」, cool struttin' CD-R Media,Analog Disc Information etc...