フルカスタムの「razr 50d」登場で蘇るドコモ × モトローラの記憶(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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モトローラ・モビリティ・ジャパンは2024年12月13日、同社初のドコモ向けAndroidスマホとなる「motorola razr 50d」を発表しました。

型番からも分かるとおり、このモデルは9月に発売された「motorola razr 50」のドコモ版という位置づけ。ソフトバンク版は「motorola razr 50s」でしたが、ドコモ版は「50d」。端末名の最後にキャリアの頭文字をつけることで、それぞれ別モデルとして展開します。

▲ドコモから発売されるモトローラ製端末のrazr 50d

今回は、ボディに使う素材に綿や木材パルプから得られるアセテートを採用。その過程でできるマーブルのような模様が、1台1台異なるのが特徴です。端末を納める個装箱にも竹とサトウキビを使用。ドコモは2030年のカーボンニュートラルを目指していますが、端末としてもそれに貢献します。

▲ボディの模様は、再生素材を使っている証。素材による自然な模様がゆえに、1台1台異なっている

▲パッケージにもエコフレンドリーな素材を使う力の入れようだ

もちろんなのか、残念ながらなのかはさておき、ソフトウェアもドコモのフルカスタム仕様。ホーム画面を縦横無尽に飛び回る、あの「豆腐」のようなキャラクターもrazrシリーズに導入されました。ホーム画面そのものも「docomo LIVE UX」。変更は可能ですが、デフォルトではほかのドコモ版Androidスマホと同じユーザーインターフェイスを採用しています。

▲豆腐ことmy daizのキャラクターもrazrに参上

razr 50との細かい違いなどは別の記事が上がるそうなので、ここではドコモとモトローラの歴史を振り返っていきたいと思います。最近の若い人は実際にものを見たことがないかもしれませんが、ドコモはかつてモトローラのフィーチャーフォン(iモード端末)やスマホを取り扱っていました。

その付き合いは古く、元々はドコモユーザーが海外に出たときに国際ローミングするための専用モデルとして、モトローラの「Motorola V66」という端末を扱っていました。海外の第2世代であるGSM対応モデルです。なぜ、こんな端末が必要だったかというと、当時ドコモの端末には海外用のGSMに非対応だったためです。その後、端末そのままで国際ローミングができるようになり、海外専用端末をレンタルするという仕組みはなくなりました。

▲2003年にレンタルの形で提供されていたV66。ドコモの国際ローミングサービス開始と同時に導入された

その後に投入されたフィーチャーフォンが、現在のrazrの原型とも言える「M702iG」や「M702iS」です。どちらも、702シリーズとして販売されていたモデル。Sは国内向けですが、Gは「Global」を意味しており、70Xシリーズとして初めて国際ローミングに対応していました。また、M702iSはスタイリッシュな薄型ケータイとして、国内メーカーばかりだったiモード端末の中では異彩を放っていました。

▲スタイリッシュさでは群を抜いていたM702iS。razr 50 ultraのHot Pinkは、この端末のカラーにインスパイアされたものだ

余談ですが、M702iSはファッションブランドのドルチェアンドガッバーナとのコラボモデルも販売されました。このコラボモデル、購入できるのはドコモショップではなくドルチェアンドガッバーナの店舗のみで、しかも端末単体での販売でした。当時は当然ながらSIMロック解除もなく、ドコモの回線でしか使えないにも関わらず、です。とは言え、ゴールドに輝くM702iSはなかなかレア。物珍しさもあって、筆者も当時表参道にあった店舗に並び、1台入手したことを覚えています。

▲ドルチェアンドガッバーナとのコラボモデルも日本で発売。SIMロックがあるのに、端末単体での販売された当時としては非常にレアなケース

以上はフィーチャーフォン時代の話ですが、モトローラのスマホもドコモから出ています。それは、「M1000」。Symbian OSを採用した1台で、iモードがまだまだ全盛の中、この端末もかなりの異彩を放っていた記憶があります。当時は法人向けとして発売されたM1000ですが、なぜか某キー局のお昼の番組で取り上げられたり、解説書が出版されたりして、いつの間にか一部のコンシューマーにも受け入れられていました。

一方で、当初はパケット定額に未対応、すなわちデータ通信料が青天井で課金されてしまうなど、いろんな意味でリスキーな端末でもありました。M1000が発売された2005年の2年後にあたる2007年には、米国で初代iPhoneが登場。翌2008年には、iPhone 3Gが日本に上陸します。早すぎたスマホとも言えるM1000ですが、その後、Android全盛になっても、同社の端末がドコモから発売されることはありませんでした。

▲“早すぎたスマホ”として一部ではおなじみのM1000。OSにはSymbianを採用していた

KDDIやソフトバンクはモトローラのAndroidスマホを取り扱ったこともあるため、一部ではM1000で相当深いトラウマを負ってしまったのではないか───と言われたとか言われなかったとか……。モトローラ自身も紆余曲折とグーグルを経てレノボ傘下になり、現在はフォルダブルスマホのrazrシリーズを主力にしています。

といった経緯で、ドコモが同社のAndroidスマホを扱うのは初めてのこととなります。親会社の筆頭株主がお国なだけに、中国メーカーのスマホを避けているように見えるドコモですが、そのせいもあって端末ラインナップのバリエーションが狭まっていました。モトローラはレノボ傘下とは言え、同社そのものの本社は米国。ドコモ的にはギリギリセーフといったところだったのかもしれません。

そんなドコモですが、razr 50dを販売することでフォルダブルスマホのバリエーションが広がっています。同社は横折り端末として、サムスン電子の「Galaxy Z Fold」シリーズとグーグルの「Pixel Fold」シリーズを展開。これに対し、コンパクトに持ち運べる縦折りのフォルダブルスマホはサムスン電子の「Galaxy Z Flip」シリーズしかラインナップにありませんでした。

▲ドコモの縦折りフォルダブルはGalaxy Z Flipシリーズのみ。積極的にラインナップを拡大するソフトバンクと比べ、ややバリエーションに欠けていた

Galaxy Z Flipはいわばサムスンのフラッグシップモデルの1つ。その機能は魅力的なものの、お値段もやや高めになっていました。これに対し、ソフトバンクはサブブランドのワイモバイルから激安フォルダブルとして名高いZTEの「Libero Flip」を販売。モトローラのrazrもrazr 50sだけでなく、オンライン限定ながら「motorola razr 50 ultra」まで取りそろえています。縦折りフォルダブルがよりどりみどりなソフトバンクに対し、ドコモは1機種勝負だったと言えるでしょう。

比較的スペックを抑えたrazr 50dが加わったことで、このラインナップに広がりが出ました。どちらかと言えば、フォルダブルスマホでマスに受け入れられているのは縦折りタイプ。価格が手ごろなのはもちろん、スタイリッシュさが受けて海外でも徐々に人気が出てきています。その意味では縦折りフォルダブルのラインナップが豊富なモトローラと、それを広げたかったドコモがタッグを組むのは必然とも言えるでしょう。久々のモトローラ端末なだけに、販売にも力を入れてくることが期待できます。

《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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