IDCの調査によると、2024年第3四半期(7~9月)の世界の腕時計型デバイス市場で、ファーウェイがアップルを抜いて1位となりました。この腕時計型デバイスにはスマートウォッチとリストバンドが含まれます。
ファーウェイは、より小型になった血圧測定対応ウォッチ「D2」や、主力モデルを「GT5」「GT5 Pro」にリニューアルしたこともあり、出荷台数を大きく伸ばしたようです。
また、シャオミは低価格なリストバンド「Xiaomi Smart Band」が出荷台数をけん引しています。スマートウォッチだけで見ればApple Watchの強さは揺らぎませんが、腕時計型デバイス全体なら、シャオミがいずれアップルを抜くでしょう。
さて、ランキングで注目すべきは5位のBBK。中国の歩歩高(Bubugao)です。世界シェア5位ですが、マーケットはほぼ中国国内、しかも製品は子供向けのスマートウォッチだけです。同社のスマートウォッチは傘下の「小天才」で展開中、海外では東南アジアなどで「imoo」ブランドで販売されています。
子供用のスマートウォッチだけで世界シェア5位に入るなんてありえないと思うもしれませんが、中国は人口が14億人を超え、さらに子供の誘拐対策など防犯面でスマートウォッチの需要が高くなっています。例えばこちらの写真。深センの量販店の小天才販売コーナー。
品ぞろえも豊富、10機種弱あります。価格も1万円台のものから4万円を超える高性能機まで。
これは別の家電量販店の子供向けスマートウォッチコーナーで、親御さんにつれられた子供が製品を試しているところ。
子供向けスマートウォッチはBBKだけではなくファーウェイ、シャオミ、その他多数のメーカーが出していますが、BBKが圧倒的にシェアを取っています。
その理由は小天才が早い時期から子供向け製品に特化し、最初の製品から品質が良かったこと、また3GやLTE搭載を積極的に進め、カメラも搭載するなど高性能化を進めたこと、さらにスマートウォッチで完結できる独自のSNSも展開していることなど。中国の街中ではスマートウォッチをはめている子供の姿を多く見ますが、そのほとんどが小天才のモデルです。
最近は幼少時代から小天才を使い続けてきた子供たちが中学校高学年になっても使えるようにと、落ち着いた色合いのデザインの製品も出しています。
なお、子供用スマートウォッチは大人向けと大きな違いがあります。単体で使うものなのでスマートフォンからの通知を受ける機能はありません。LTE搭載は基本です。
・スマートフォン連携:無し(単体で運用可能)
・セルラー通信:基本的にあり(単体で通信可能)
・カメラ:搭載(親や友人とのコミュニケーション用)
・モバイルペイメント機能:搭載(子供が現金を持たなくて済む)
小天才のスマートウォッチで育った子供たちは、やがて高校生、大学生、社会人となるにつれ大人用のスマートウォッチに買い替えていきます。Apple Watchに買い替える例も多いでしょう。しかし、もし小天才が若い世代向けのスマートウォッチを出したなら、そちらに買い替えていく子供が続出するでしょうね。そうなるとアップルもファーウェイもシャオミもその存在を無視できなくなるのです。
一方、中国国内だけを見ると子供向けスマートウォッチ市場でファーウェイがBBKを一時的に抜くこともあるなど、競争も激化しています。最近では中国のvivoの店舗で小天才製品を扱う店も増えており、これはスマートウォッチとスマートフォンのどちらも販売しているファーウェイやシャオミへの対抗意識もあるのかもしれません。
果たしてBBKが大人向けスマートウォッチも開発してシェアを拡大できるのか、あるいはそこに到達する以前にスマートフォンメーカーとの競争に敗れてしまうのか。今後の展開から目が離せないところです。
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